日記

見たものメモ

0415

西洋美術史入門」(池上英洋 著)を読みました

美学・美術史に興味はあるものの、予備知識とかそういったものが全くないので、〇〇入門、みたいなものをたくさん読んでみようキャンペーンをしています。とりあえず1歩・・・みたいなスタンス

 

この本は大きく3つに分けられます。一つ目が、美術とモチーフの読み取り方。次に、美術と社会の関係。最後に、絵画についての詳細な区分と歴史。

 

〇〇史と見ると日本史や世界史・・・を思い浮かべる程度の知識しかないので、タイトルを見た時は歴史についての本かな?と思ったけど、読んでみると、どういった歴史をたどっていったかということについてよりも、その絵画はなぜその時代に描かれたか?といったことが書いてあった。(色々気になったので読了後に通史が載ってる本を買った)

 

白い鳩が平和の象徴とされたり、赤い髪が悪魔の象徴とされたりと、そのものが持つ情報(鳩は鳥であるとか)以外のことが絵に込められていることがあり、それらを読み解くことで、その絵が描かれた時代の社会的な背景がわかるようになる。これについてはパノフスキーのイコノロジー研究が名著であるので、読んでいきたいと思う(西洋美術史入門買う前に買ってたけど積んでた、読みます・・・)

 

美術と社会が大きく関わっているということは、よく考えれば当たり前なのだけれど、絵画が趣味としてよく利用されるようになった現代の価値観だと忘れがちかもしれない。別に絵を描かなきゃ死ぬわけじゃないって考えが自分の中では罷り通っていたのかも。同人とかになれてるのかもね

(今もだけど)画家が絵で生きていくには買ってくれる人が必要だった。その「買い手」は、教会や君主、富裕層とかが一般的。

教会が絵を買うというか絵を発注する目的は宗教の布教である。今でこそ多くの人が文字を読める=本を読めるけど、500年前の識字率は今とは段違いだろうし、そういった文字を読めない人も感覚的にわかり、且ついつでも知覚できるのが「絵画」だった。口語とかも大丈夫だけど自分以外の誰かが必要という点では本・絵の方が優れているのかも。

他にも、君主が自分の威厳を示すことや後世に伝えるための記録媒体として、肖像画を画家に依頼したというパターンもある。

 

では描かれた絵が全て宗教や君主にまつわるものだったのか?と言われるとそういうわけではなくて、フェルメールは「天文学者」とか、「牛乳を注ぐ女」なんて絵まで描いている。

このような絵が現在まで残っているのは、もちろん絵自体が素晴らしいものであるとされたのもあるだろうけど、絵を買って、大切にした人がいるということ。さらにいうと、宗教などにあまり関係のない絵でも売買が成立するシステムがあったということ。

こういった時期になると部屋に絵を飾る余裕のある人たちが、インテリアとして絵を買うようになった。この時代に人気になってくるのが、静物画や風景画といった主題である。

 

一連のこと、特に美術と社会が密接に関わってきたということを理解した後に改めて西洋美術史の歴史を見ていくと、その時代に何が起こったということではなく、その時代にそれが起きたのは何故なのか?という背景がよくわかった。

 

末尾にさらに学びたい人向けの推薦文献リストが乗っており、こちらも大変参考になった。今の所はイコノロジー研究と西洋美術史入門〈実践編〉を読みたいと思います。

また余裕があれば、別に読んだ「美学への招待」もメモにまとめておきたいなー。